パーカッション講師 沓名大地先生にインタビュー!

中学校時代に吹奏楽部で打楽器を始め、東京藝術大学在学中にプロのオーケストラにエキストラとして参加。以降、オーケストラはもちろん、ソロ、アンサンブル、吹奏楽などフリーランスとして多彩な公演を経験してきた沓名大地先生。現在は、自身が大切にしたい“芸術としての音楽”を発信する活動として、打楽器デュオ「note」、打楽器奏者3人の「トリオ・ループ」のメンバーとしても活躍中です。レッスンは、「興味のある打楽器を自由に選んでほしい」というスタイル。マリンバ、ビブラフォンなどの鍵盤打楽器から、タンバリン、トライアングルなどの小物打楽器まで、種類問わず打楽器全般を受け付けています。「講師と生徒ではなく、音楽仲間として一緒に楽しみたい」と語る沓名先生。これまでの軌跡や、音楽への思い、レッスンで大切にしていることなど、さまざまなお話を聞きました。

-まずは、打楽器を始めたきっかけを教えてください。

中学校のとき、ジャンケンで負けて仕方なく吹奏楽部に入ったのが始まりです(笑)。本当はテニス部に入りたかったんですけど、人数制限があったのでジャンケンで決めることに。そこで見事に負けちゃって、でも学校の方針で、生徒は全員部活に入らなくてはいけなかったからどうしよう?と。そしたら吹奏楽部だけガラ空きだったので入部しました。僕自身は3歳からピアノをやっていたし、父と祖父がクラシック大好きで昔からよく一緒にレコードを聞いていたし、音楽は大好きだったから抵抗はなかったんですけど、吹奏楽部はなかなかやる気が出なくて。最初のうちはサックスをやっていたんです。だけど顎関節症になりかけてやめて。その後は、趣味でドラムをやっていたことから打楽器のパートを任されるようになりました。マリンバ、シロフォン、ビブラフォン。そういう鍵盤打楽器は、音譜が読めないと弾けないんですけど、僕はピアノをやっていて楽譜を読めたので、それで任されたという経緯もあります。あとは、体が大きいからという理由で大太鼓をやるときもありましたね。

-部活はやる気がなかったということですが、打楽器への興味は徐々に深まっていったのでしょうか?

文化祭で「エル・クンバンチェロ」というラテンの名曲を演奏することになったときに、マリンバを担当したんですけど、難しくてなかなか思うように弾けなかったんです。それがすごく悔しくて、両親に相談したら、マリンバ奏者の先生の教室に習いにいけることになって。いざ習い始めたら急にものすごく楽しくなっちゃって、そのままずっと打楽器の魅力にハマってしまったという感じです(笑)

-3歳から始めたというピアノは、その当時も続けていたのですか?

そうですね。大学受験まで15年ほど続けていました。基本的に飽き性なので、ピアノもそんなに熱心に弾いていたわけじゃなかったんですけど、マリンバにハマったら不思議とピアノにもハマって(笑)。高校生のときは、年に一度の合唱コンクールで毎年伴奏をしていました。今でもたまに、好きなソロの曲を弾いたりしますよ。あとは、マリンバの曲の練習をピアノでやることもあります。マリンバには、“トレモロ”という同じ音を連打して音を引き延ばしていく奏法がありますが、ペダルを使ってピアノの音を響かせることで、その連打音をイメージする練習ができるんです。

-マリンバにハマってからは、音楽家になる夢を抱いていましたか?

打楽器のソリストになりたいと思うようになりました。でも、ソロだけにこだわることなく、オーケストラやアンサンブルも、隔たりなくオールマイティにやりたい、と。高校時代には、メタルバンドを組んでドラムをやっていたし、いろんなジャンルを知って、いろいろな打楽器をやって得意不得意を経験して、どんなフィールドでも演奏できる音楽家を目指していました。実際、大学院修了後は、いろんな公演に呼んで頂けて、それによってさまざまな発見がありましたし、自分自身の表現の幅というか、語り口が増えて今すごく楽しいです。

-打楽器奏者の方と結成した「note」や「トリオ・ループ」といった独自の活動もされていますね。

最近は、クラシックでも簡単に配信ライブができる時代になりましたが、だからこそ本当にいいものを追求して発信していきたいと思っていて。僕は、生の空気感、緊張感があるところで音楽を奏でたり、聞くことが大事だと思っているんです。音楽は、リアルな場で自分の五感を研ぎ澄まして、もっといえば第六感で体感するものじゃないかな、と。そんな自分が信じる音楽のあり方を追求したくて、僕が尊敬する後輩のマリンバ奏者と一緒に始めたのが、この2つのプロジェクトです。どちらもこだわっているのは、生の演奏会。「トリオ・ループ」のほうは3人で演奏するんですけど、もともと打楽器三重奏はレパートリーが少ないので、それを拡張するために同世代の作曲家にオリジナル曲を作ってもらったり、新しい試みも取り入れています。こういう演奏会をシリーズ化して何十年も発信し続けていったら、自分たちの思う「芸術としての音楽」の地位が確立していくのでは。そう信じて活動しています。

-幼稚園や小学校でのアウトリーチ活動も行っているとか。

大学院のときに、音楽教育学のクラスでアウトリーチについて学ぶ機会があって。実際に、幼稚園や小中学校、老人ホームに出向いて演奏をするんですけど、これがすごく勉強になりました。芸術としての音楽も大事だけど、対象を考えた音楽というのも大事。たとえば、小さな子供たちに向けてどう発信していくか。誰が弾いても同じっていうものじゃなく、いかに自分たちの楽器で、クオリティ高く一緒に楽しめる音楽をやるかっていうところ。そのアプローチの仕方について、毎回学部の先生からアドバイスを頂いて、回を重ねるごとにどんどん次に活かせるようになって。音楽ってゴールがないなぁって思いました。それ以来、いつも何か得られる手ごたえに喜びを感じながら、アウトリーチ活動に取り組んでいます。

-講師のお仕事を始めたのは、どんなきっかけからですか?

2020年に受験生のレッスン依頼があって、それから始めました。実際に1年ほど講師を続けてみて、僕って頭が固いかもって今思っています(笑)。どうしても芸術としての音楽の価値を損ないたくないという思いがあるので、趣味で始める方にしても音楽に対する敬意を持って頂きたくて。僕にとって大事にしたい信念を生徒さんと一緒に共有できたらいいな、と。1曲やるにしても、弾けるための方法をただ教えるというより、その曲の真髄に迫って、それに必要なテクニックを一緒に考えていきたいというか。なんだか難しい人だなって思われるかもしれないけど(笑)。僕にとってはそういうレッスンがすごく楽しいし、生徒さんからも楽しいって言って頂けることが本当に嬉しくて。楽譜という正解例があるので、それは大切にしていくべきだけど、楽譜から読み取った上で自分の言葉としてどう音楽を楽しんでいけるか。それを先生対生徒でなく、仲間として対等な立場で一緒に考えていきたいなと思っています。

-では、具体的なレッスンの進め方、レッスンをする上で大切にしていることなどを教えてください。

僕はだいたいの打楽器を持ち合わせているので、まず、ご自身がやってみたいと思う打楽器を自由に選んで頂いて、バチの持ち方など基本的なことをお伝えしていきます。同時に、その楽器がどう発達してきたかといった歴史もお話していますね。そうすると楽器の製作者の熱意が伝わって、より音楽を楽しめるようになると思うんです。初心者の方は、どうしても上達したいという気持ちにあふれて焦ってしまいがちですが、僕は上達がすべてではないと思っています。その人の語り口が定まっていないのに上達ばかり目指すと、作業的になってしまって、音楽になっていかないんですよね。。ただ“あいうえお”を覚えたという感じ。大事なのは、そこから「今日はいい天気ですね」といった言葉を音楽でどう伝えていくか。それから、生徒さんの生活感と、作曲家の生活感がコネクトすることも大事だと考えています。双方の生き様が結びつくことで、自分の言葉として発信していける。それを導けるようなアプローチを心がけていますね。

-経験者の方に目指してほしいのは、「楽器=自分という感覚になるようなアプローチ」だとか。

学生時代の3年間、NHK交響楽団の竹島悟史先生に習っていたんですが、先生のお話には圧倒的な説得力があるんです。中でも、ものすごく共鳴した言葉があって。「自分の言葉を内面から出すには、楽器を自分の体の一部にしないとだめだよ」と。楽器も含めて自分なんだ、楽器が話していること=自分が話していることなんだっていう感覚。これは、自分が音楽をする上で大事にしたいことであり、皆さんにもお伝えしていきたいことですね。

-表現力を養うために必要なことなんですね。

そうですね。楽譜の読み方にしても、ただドレミファソを読んで、その羅列で弾くだけなら、国語の時間に小説を読んで、ただ「おもしろかったです」と言っているのと同じだと思うんです。なぜここにドの音を置いたのか、なぜこのフレーズを書いたのか、作曲者になりきって読んでいくことが大切。それをやると、自分の中の引き出しが増えて、より楽しくなっていくので、ぜひ一緒に取り組んでいきたいですね。そして、そこで楽譜から読み取ったものは正解ではあるけれど、ゴールではないということもお伝えしたいです。自分自身がその作品に対してどんなイメージを持ってどう表現したらよいのか、必要な音はどうしたら出るのか、作品に対する“最適解”を一緒に探っていきましょう。

-これから楽器を購入したいという方へアドバイスがあれば教えてください。

打楽器は、例外もありますが、ほとんどが受注生産なんです。受注生産のものは絶対的にいいですね。大事なのは育て方。個体差もあり、木製の楽器が多いので、買うときより買った後のことを知っておいていただけたら。たとえば、マリンバ。木は何年もかけて乾燥して、その環境に合う状態になっていくので、最初からいきなり固いバチで叩いてしまうと音が鳴らなくなってしまいます。木がまだ慣れていないところに圧力をかけることで、乾燥がうまくいかなくなってしまうんですね。生徒さんで購入を考えている方がいたら、もちろんご相談にのりますし、時間が合えば一緒に出向いて試奏することもできるので、そのあたりも頼りにして頂けたら嬉しいです。

-では最後に、沓名先生のレッスンをお考え中の方々へメッセージをお願いします。

「怖くないですよ」って言いたい(笑)。伝えたい思いがありすぎるのか、僕は性格が厚かましいんだと思います。1を教えるんじゃなく、500くらい教えたいので(笑)。生徒さんとしては、音楽のこと、打楽器のこと、奏法のことを教えてほしいと思うかもしれないけど、それらは全部生活と結びついているので、同時にお互いのいろいろなことも知っていけたら嬉しいですね。音楽以外の趣味も知りたいし、この映画のこういう場面のイメージに結びつくといいねとか、話したい。もちろん、知りたいことやわからないことに関しては、全部その場で解決できるようにするので、なんでも遠慮なく相談してください。仲間という関係性で一緒に音楽を楽しみましょう!

取材・文/岡部徳枝 text by Norie Okabe

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