ギター科、矢野修先生にインタビュー

13歳のころ移住したロンドンでギターを学び始め、約30年間イギリスを拠点に海外で音楽活動を続けてきた矢野修先生。2018年に帰国し、現在は長野県にて対面・オンラインレッスンを実施しています。講師を始めたのは、なんと大学在学時の18歳のとき。それから20年以上もの指導経験をお持ちの矢野先生に、これまでの活動のこと、レッスンのこと、講師としての想いなど、さまざまな話をお聞きしました。

-18歳の頃からギターの指導をされているということですが、どんなきっかけで講師のお仕事をスタートしたのですか?

大学から「先生をやりませんか?」と依頼があったんです。日本ではあまりないことかもしれませんが、私の通っていたロンドンの音楽大学では学生が生徒さんをとることはごく普通のことでしたし、実習コースでは指導も課題となるので、講師を始めるにはちょうどよい時期でもありました。そのときは、ギターを習いたい生徒さんがたくさんいて、先生が不足しているということで声をかけて頂いて。ふだんから友人同士で教え合うこともありましたし、教えることはすごく好きだったので、自然と始めることができましたね。

-矢野先生はクラシック、ジャズを中心に、さまざまなジャンルで音楽活動をされてきたんですよね。

13歳のころ夢中になったのはロックンロール。それからクラシック、ジャズを学び、ファンクやレゲエ、ラテン、オペラなど、いろいろなジャンルで演奏してきました。ソロのリサイタルとなれば、自分が大好きなバッハやジャズの即興をメインにしたプログラムを作りますが、バンドではセッション的なライブが多かったので、そこでいろいろなジャンルの魅力と出会えたのがいい経験になったのだと思います。特にヨーロッパやアメリカのクルーズ船でライブをしていたときは、毎回違うアーティストと共演するので、常にリサーチをしてチャレンジして、即興でアレンジをして、学んでいくという。振り返ってみると、そのときどきの仕事の中で必要な技術を身につけていくという経験が今の自分を作ったのかなと思いますね。

-2年前までロンドンで実施していたレッスンと、現在日本で行っているレッスンと、内容的に違う点はありますか?

あちらで使っていた教材を日本語に訳したくらいで、内容はほとんど変わらないですね。ご希望される方には、英語でのレッスンも行ってますし。ロンドンにいたときもオンラインレッスンをやっていて、海外の方の指導もしていたんですが、なぜか日本人の生徒さんはいらっしゃらなかったんです。だから帰国して、生徒さんから「この曲をやりたい」と教えてもらう日本の曲がすごく新鮮で。特に、小学生や中学生から聞くJ-POPは初めて聞く曲が多くて、いろいろと勉強になっています。僕にとって“教える”っていうのは一緒に道を歩んでいくということなので、生徒さんから学ぶことも多い。いろいろな生徒さんがいて、それぞれ演奏したい曲も違って、さまざまなジャンルの音楽に連れていってくれるので、日本に来てまた一層自分の中の音楽の世界が広がった気がしています。

-“一緒に道を歩んでいく”という考え方、とても素敵ですね。

レッスンではもちろん会話をしますし、私はおしゃべり好きなほうなんですが、実は自分が思う音楽を言葉に変えて伝えるって難しいことなんですよね。言葉は完璧ではないし、限界がある。だから一緒に体験するのが一番。 “一緒に音楽を作る”という気持ちで取り組んでいます。

-それは体験を共有するということでしょうか?

そうですね。私の先生がよく「人間はものを分解しているか、作っているか、どちらかだよ」と言っていました。音楽を分析して分解し、組み立てて作る。私のレッスンでは、その体験を一緒にやりましょうということですね。たとえばおいしい料理を食べたとき、材料は何を使っているんだろう?と分析しますよね。それから自分で作るにはどうしたらいいかな?と考える。そして実際に作って味わう。そういった“分解”と“作る”という段階で、人は成長や上達を感じられると思うので、ギターのレッスンでもそれにトライしてみましょう、と。テクニック、リズム、ピッチ、和音、ハーモニー、音質など、いろんな視点からバラして見ることで、思いがけない音楽ができあがる。分析の仕方や作り方って、本当に人それぞれですけど、実は私みたいに音楽をずっとやり続けてきた人間より、音楽を始めたばかりの人のほうがおもしろかったりするんです。それを一緒に発見できたらいいなと思ってます。

-具体的にレッスンはどのように進めていくのでしょうか?

まずは生徒さんから、どんな曲を弾きたいのか、どんなギタリストのように弾きたいのかなどを教えて頂きます。それを目標として設定し、達成するために必要なステップを踏み、必要なテクニックを身につけていくというのが大まかな進め方ですね。生徒さんによって、ビシッとメニューを作って進めたいという人もいれば、そういうのは苦手という人もいる。ほかにも、楽譜を読むのが嫌いな人、五線譜ではなく六弦のフレット番号を書いたタブラチュアが好きな人、譜面なしで耳で覚えたい人、皆さんいろんな好みがあって、それぞれ覚え方の強みもあるので、一人ひとりに合った方法で進めるようにしています。音楽理論については、そのとき必要なものだけをお伝えするというスタイル。詰め込みすぎてもつまらないし、すべて知る必要はないと思っています。使わない道具を持つのではなく、今使うものだけ使い方を知っておきましょう、と。

-生徒さんそれぞれに合わせてカスタマイズしていくということですね。

生徒さんへの一番大切な質問は、“What do you want?”だと思っています。何が欲しいのか、どうしてここに来たのか。その答えがあってすべて始まっていくというか。といって、ちゃんと答えなきゃ!なんて、難しく考えなくていいんですよ(笑)。まず、小さくてもいいから目標を作ることが大切ということです。それを一緒に達成していくために、コミュニケートしながら生徒さんの個性を尊重して、強みを発掘して、その人が幸せになるレッスンを実現できたらいいなと。

-自身の“強み”を知るって、自分ではなかなか難しいことのように思います。

そうなんです。自分のいいところ、強みって、案外見えなかったり、気づけなかったりしますよね。だからこそ“強みを発掘する”というのは、私が講師としてやるべき重要なことだと思っています。目標を持つと壁ができる。その壁をどう乗り越えるのか、一緒に挑戦していきましょう、と。小さな壁を乗り越えて、最後に大きな壁をクリアして、そうすると自分では把握できていなかった強みが見えてきます。強みを知ると、自信にもつながりますし、上達も早くなる。なにより演奏するのが楽しくなるんですよね。私自身も、生徒さん1人1人が上達したときは、レッスンがとても楽しい。先日、9歳の男の子の生徒さんが「僕もギターの先生になりたい」って言ってくれたときは本当に嬉しかったですね。

-ギター購入時の選び方で悩んでいる方も多いと思います。そういう生徒さんに、矢野先生はいつもどのようなアドバイスをされていますか?

とにかくいろんなギターを触って時間をかけて選ぶこと。友達が持っているものでもいいし、楽器屋さんのものでもいいし、いろんなものを触ると経験が積まれて、自分に合うものがわかるようになると思います。あとは、運命的な出会いもあると思いますよ。楽器が自分を選んで向こうからやってきたみたいな(笑)。楽器は、ずっと一緒に遊んでいく相棒です。名前をつけるのもいいですね。大切にするし、生きだすというか、変わりますよ。

-では最後に、これからギターを始めようとしている方へアドバイスをお願いします。

勇気を持って飛び込みましょう! よく「初心者でもいいんですか?」とか、「このくらい弾けるまで恥ずかしくて行けません」とか、申し訳なさそうに言う方もいらっしゃいますけど、そんな心配は一切いりません。自分で音を表現する喜び、それを一緒に共感できる幸せをぜひ体感していただきたいですね。

取材・文/岡部徳枝 text by Norie Okabe

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